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RJ−580 改良箇所と方法 @ 

今回、技適認証試験を受ける為にナショナルRJ−580をベースに改良を施しましたが、当機をベースに選んだ理由は
○個体内のシールドが他機種に比較してシッカリしている事。
○ダブルスーパー方式の受信回路を採用している事。
○フィルター類を内蔵するスペースが広く取れそうであった事。  などです。
SONY系、770やR5ベースでも良かったのですが、こちらの機種については今後、時間を見て改良していきたいと思います。

現存する型式検定合格機、技適基準合格機種で平成17年12月改正の新たな技術基準適合をパスする為には
一口で言うのであれば「電波の質をクリーンにする」事だと言えそうです。。

現行機種では、スプリアス領域(搬送波より15KHz外側の周波数帯域)における
スプリアス発射や不要発射、また占有周波数帯幅、副次的に発生する電波の強度など
いずれも、そのままではパスする事は出来ないと思われます。
基本波の整数倍で発生する高調波はLPFで、副次的に発生する電波はBPFで抑制する方向で。
また占有周波数帯幅の基準値は送信部、ドライブ段変調方式、コア調整などにて、クリアーする方向で改良を施しました。


◇ 基本的なメンテナンス作業 

 ベースになるナショナルRJ−580は製造年月日が昭和54年。
 メイン基板に取り付けられている劣化が考えられる部品は殆ど新品の物に交換します。
 ケミコン類、音声アンプIC、送受信ライントランジスタなどが、これにあたります。
  

○ 周波数校正(較正)



  580はダブルスーパー方式の受信回路ですから
  校正を必要とするXtalは送受信合計で10波あります。

  各ch(1〜8ch)37MHZ帯局発周波数、
  受信ライン2nd、mix 10.240Mhz、送信ラインmix 10.695Mhz。

  電波形式がA3Eである為SSBの様にシビアに調整する必要はありません。
  技適基準値も 50(10
−6)と言う、かなり甘い数値です。
  
  
局発周波数37MHZ帯の周波数校正は
  各Xtalの片足から局発トランジスタベースへ繋がる
  パターンの間へコンデンサを入れてやる事で、校正可能です。

  Xtalは経年劣化により、殆どの場合が下側へズレている事が多いものです。
  先にお話した様に電波形式がA3Eなので
  キッチリ周波数校正する必要はないですが 調整を行いやすい様、
  今回は固定コンデンサ+トリマコンデンサで調整しました。

写真上
100pトリマー+固定コンデンサを穴あき基板に取り付け
基板内のXtal→局発トランジスタ ベース間のパターンをカットして
そのカットしたパターンの間にトリマ+固定コンデンサから出した
リード線を半田付けする。

左写真で分かる様に各ch Xtal片側の足をパターンカットし独立させて
その部分にトリマーコンデンサ、プラス固定コンデンサからの片側リード線を半田付けする。
もう片方のリード線はまとめた状態(1本でOK)で局発トランジスタの
ベースへ繋がるパターンに半田付けする。
※注意したいのは、トリマ群から伸びるリード線を極力短くしないと
 リード線部分が静電容量や浮遊容量などを含んだコンデンサになると思われ
 発振周波数が不安定になる事があります。

左写真は8波クリスタルとトリマー群基板を銅板でシールドした様子。
最終的には上側にトリマー調整用の穴だけ開けた蓋を付けました。
シールド板で写真の部分を囲う際、邪魔になった基盤上シールド線などは
基板裏側で配線する様に変更しました。

左写真は局発部分の基板裏側になります。
上から2番目の写真で見えていた、リード線半田付け部分や
37MHZ帯Xtalの両足部分を綺麗に隠す様に0.5mm厚真鍮板で
シールドしてやりました。
副次的に発する電波の漏れ(受信時)対策の安全パイとして
取り付けましたが必要無いかも知れません。

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○ 受信回路

 ベースとなるRJ−580は元々、受信感度は良いと言われている無線機です。

 メンテナンスとしては受信ラインのFET/Trを新品へ交換したに過ぎません。
 受信ライン内、第2mix段、局発10.240Mhzの周波数校正は局発Xtalと局発Trベース間に直列接続されている
 コンデンサをトリマ+固定コンデンサに変更してやり、キッチリ10.240Mhzへ校正しています。
 特に難しい箇所はありません。
 局発周りは新たにシールド板を設けました。副次的に発する電波の漏れ対策の一つです。

 受信ラインで大きな変更箇所とすれば高周波増幅回路の前にプリアンプを追加した事です。
 これは受信感度を上げるという意味合いより「漏れ電波の抑制」(副次的に発する電波抑制)の意味合いが強いです。
 プリアンプはFCZ、21MHZ帯ガリ・ヒ素FETを使用したプリアンプキット(同調コイルコンデンサ定数変更)を使用しました。
 
このプリアンプのOUT側は共振回路が2段になった復同調回路(スタガ同調回路)を採用しており
 この部分が漏れ電波をカットするBPFの役目をするのではないかと考え受信回路にプラスしました。

 ついでに受信感度コントロールボリュームを580のスケルチVRを廃止してRFゲインVRとしました。

 必要のない「スタンバイピー機能」も廃止。
 当該スイッチはAGCのON/OFFスイッチへ変更しました。
 AGCのON/OFFはAGCアンプトランジスタのベース入力をON/OFFしているだけの簡単構造です。

※UK691局さんからお借りしたスペアナで測定した結果、追加したプリアンプでの副次的に発する電波の
 抑制効果は殆どありませんでした(汗) 効果があるのはBPFです。

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○ 送信回路

 送信ラインは多少変更しています。
 送信ラインTrはRF、ドライブ、ファイナル、共に別の石、C1674、C2086、C2314へ変更。
 LPF前に入れる2dBATTとリレーの通過損失があるのでファイナル直後の出力はある程度ないとフィルター通過後の送信出力は
 情けない出力になってしまいます。

 RJ-580送信回路内、ドライブ段のイン&アウト側同調コイルは、コアを抜いた位置でも同調が取りづらく
 当該コイルはFCZ 25MHZ 7o角コイルへ変更し同調コンデンサ容量の調整。
 これによりキッチリ、ディップを取る事が出来ました。
 また元々のRJ-580終段増幅回路は私には意味が分からない変な回路。
 ディップ点が素直なSONY系の回路へ、ごっそり変更しています。
 
この同調点が取りやすいという事が大変重要で、曖昧な調整をすると占有周波数帯幅が広く、高調波を多く含んだ汚い電波になるので
 注意が必要です。


 殆どの市民ラジオ無線機において変調方式は「ドライブ段、終段同時コレクター変調」だと思います。
 深い変調率を得る事が出来ますが、反面、変調入力が過大になると歪みが発生してしまう様です。(占有周波数帯幅の悪化)
 どこかのアマ無線製作記事に「ドライブ段のベースバイアスへ変調を掛けましたが使う気になれませんでした...」と読んだ覚えがあります。
 不安要素は取り除かねば....
ドライブ段の給電パターンを見直しベースへは変調入力無しの電圧印加として
 コレクタのみ変調が入る様に変更しました。
※重要なのは送信部にある3つのコア調整です。
  これを曖昧に行うと占有周波数帯幅が広がってしまいますし、低い周波数1chと高い周波数8chの送信出力に差が出たりします。
  また同じAF入力値でも変調度に微妙な差が出たりします。
  下記の回路図、「T型フィルターのトリマー」「L7」「L6」「L5」のコア調整がソレにあたります。
  調整は4ch送信状態(無変調)で「T型フィルターのトリマー」「L7」「L6」「L5」の順に最大パワーになる様に繰り返し調整。
  その後1.25khzのシングルトーン最大AF入力で1ch、4ch、8chにおいて「同様のプラス側変調」になる様L5のコア調整し
  最後にコア位置がズレない様、ロウ状の固定材で固定して終了としました。

  580元々の回路を大半使って技適認証試験、占有周波数帯幅基準値をクリアーする事が、結構難題なので
  ドライブ段トランジスタへの変調の掛け方、送信ラインのコア調整は極めて丁寧に行う必要があると思われます。
※認証試験を受けた580はプロトタイプと言うこともあり、必要無い改良もした感じがあります。 送信部も元々の580回路のまま
  C.R値の調整のみで、どうにかなりそうな気もしています。 あくまで参考事例として捉えてもらえば良いと思います。


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○ AFフィルター

占有周波数帯幅、スプリアス発射、不要発射の規制値へ大きく影響するのがフィルター類です。

AFフィルターは
実際の運用時の占有周波数帯幅の技適基準値、スプリアス領域内のスプリアス発射、不要発射の
基準値をクリアーする為に必要な物です。
技適認証試験時に入力される音声が1.25KHzシングルトーンなので技適試験時には
AFフィルターは効力を発揮しません。
実際の運用時、人の声を入力した場合に効果を発揮する事になります。


製作したのはカットオフ周波数2.5KHZ、チェビシェフ型7次LPFです。
PCソフト wave spectraで減衰特性を調べてみると2KHzより減衰し始め3KHzでは約−40dBの減衰量を得る事が出来ました。

下記はチェビシェフ型7次LPFの回路図と各L・Cの値になります。
使用したコイルは市販の物を使った関係上、設計通りの値にはなっておりませんが、減衰特性を見る限り
フィルターとしては上手く働いてくれているようです。

技適認証試験項目内「占有周波数帯幅」の測定は1.25KHzシングルトーンを無線機へ直接入力(外部マイク端子より)し
その変調度が60%に達した入力値より、さらにプラス10dBのAF入力される事になります。
10dBアップというのはマイクに向かって大声で話す位、大きな入力で
変調度は軽く100%を超えてしまう様な値です。
当然、側帯波の最大振幅も上昇する訳で認証試験で計測される両側帯波、第5から第10番目の振幅値も上昇します。
認証試験では搬送波振幅ピークと両側帯波、第5から第10番目の最大振幅ピークの電力比が−25dB以下と規定されているので
過入力は避けたいところです。

上記に記してある様に変調度60%になった時点からプラス10dBの1.25KHzシングルトーンを入力する訳で
「変調度が何%」と言う規定はありません。
と言う事は側帯波の振幅を押さえる為に音声入力にリミット(制限)を掛けてやれば良い事になります。
一定以上の入力があった時に(例えば変調度100%)入力制限をする「リミティングアンプ」を取り付ければ
占有周波数帯幅の問題は完全に解決出来ます。
今の私の知識では「リミティングアンプ」を製作する事が出来ませんがweb上にDSP制御の「リミティングアンプ」が販売されています。
基板のスペースが50ox50oと比較的小型なので内蔵する事も可能だと考えています。
現状でも技適基準値内に収まっているので良いのですが、よりクリーンな電波の質を求めるのであれば「リミティングアンプ」を通した
変調入力にすれば良いと考えています。
※認証試験項目内で一番基準値(−25dBm以下)ギリギリだったのがこの占有周波数帯幅基準値でした。

カットオフ周波数2.5KHz 7次 チェビシェフ型 LPF L.C値 

L1.2.3  100mH
C1.4    0.1uF
C2.3    0.15uF


コイルインダクタンスは設計値とかなり離れた値の手持ちにあった100mHを
使用しましたが特性はそれなりに出ているようです。
使用したコンデンサーはマイラーコンデンサ。

基盤上に部品配置し完成したカットオフ周波数2.5KHz 7次チェビシェフ型 LPF。

製作における難しい箇所は低周波フィルターなので特にないです。

フィルター基板のサイズは20x65o ガラスエポキシ基板を使用。

上図はPCソフトwave spectraへ信号源のホワイトノイズをAFフィルターへ入力しフィルター出力の減衰特性を表示させた時のモニター写真です。
2KHzより減衰し始め3KHzでは約−40dBの減衰量を得ている事が見て取れます。
オペアンプを使用したフィルターの様にザックリ切れ落ちる様な減衰特性ではないですが、それなりに減衰特性を得る事が出来ているようです。

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