SONY ICB−770 新技適対応機への変更

型式検定合格機 SONY ICB−770で、新技術基準適合認証を受けるべく改良を施してみました。
実際、まだ認証試験は受けておりませんが、UK691局さんに貸与して頂いているスペアナで認証試験項目の全てを
確実にクリアーするデーターを得ております。

6月、認証試験をクリアーしたRJ-580と違い「普及型」を意識して製作。
普及型を意識して...と言うことなので改良に要する「時間」「費用」「手間」などRJ580改に比較して格段に
短縮、縮小する事が出来たと思います。

改良箇所は
◆FCZコイルを使用した27Mhzバンドパスフィルターの追加
◆9次 ローパスフィルターの追加
◆リミッティング機能付きマイクアンプの追加

上記3点の後付けパーツを組み込み調整しただけです。
上記パーツ製作、必要経費を「サトー電気」の部品金額を参考に、ザッと計算してみました。
◇27Mhzバンドパスフィルター   FCZコイル3つ、セラコン数個   569円
◇ローパスフィルター         ディップマイカコンデンサ  13コ ウレタン線   780円
◇リミッティングアンプ         IC、コンデンサ、抵抗など       582円
その他、基板などを含めても2k円程で、上記のパーツは出来る感じです。

以下、改良箇所の写真を交えて説明します。 あくまで参考までと言うことで、これが絶対ではありません。

circuit_AF_AMP

左、回路図が LM358Mを使用したリミッティング機能付きマイクアンプになります。
web上に公開されていた回路で、入力抵抗値、電源ラインへパスコンを追加したに過ぎません。

リミット機能が付いたマイクアンプが何故必要なのかはRJ-580の改良記事にも書いてある様に認証試験項目「占有周波数帯幅の基準値」をクリアーさせる為に必要になります。
「絶対必要」ではありませんが、確実にクリアーさせる為の安全パイと実際の運用時、過変調防止にも役立ちます。

ノーマルICB−770の占有周波数帯幅を試験同様の手順で測定しても認証試験基準値はクリアーしていました。
(個体により差があると思います)
確実にクリアーさせる為に取り付けた感じです。
費用も大した額ではないので確実にクリアーする事を考えれば安いものです。

100kのVRと出力側1kのVR調整で、リミット調整が出来ます。
実際の認証試験で入力される1.25KHzシングルトーンを変調度60%になった値からプラス10dBの入力を加えた時に変調度が100%を僅かに超える様、VR調整しました。
あまりリミットを利かせ過ぎた調整をした場合、実際の音声マイク入力変調度が低くなります。(問題ない感じですけど)
ある程度で、押さえた方がよい感じです。

写真は穴あき基板を使用し部品を取り付けた状態。
サイズも、そこそこ小型です。

770への追加は、770元々のマイクアンプは使用しないのでトランジスタ、入力コイル、マイクシールド線など取り外します。
770基盤上の部品番号で言うところのL5.C29.Q8.C34.R39を取り去ります。
取り外したR39の同じ箇所へ0.033ufのセラコンを半田付け。
リミッティングアンプ入力は、770のジャンパ線w11を外した箇所へ。
出力はR39の変わりに取り付けた0.033ufの片側へ配線。
※詳細説明は下記に記してあります。

<

左回路図は、今回、新たに採用したFCZ28Mhzコイルを使用した
27MHZバンドパスフィルターです。
RJ580改へ追加したBPFはコイルにトロイダルコアにEC線を手巻きしたものを使用しました。
製作時間や調整も時間がかかりましたが、このFCZコイルを使用したBPFは
製作時間、調整など大幅に軽減することが出来、減衰特性も十分。
失敗することなく確実にBPFを製作することが出来ます。

基板サイズも33x55oと小型です。
サイド部分を切りつめれば、更に小型に出来ます。

BPF取り付け箇所は受信部の頭部分。
770のメイン基板でいえばL1とPTTスライドスイッチ間を繋ぐパターンの間になります。

構造は簡単ですが、その効果は大きく、受信待機時に漏れ出てくる電波の
(16Mhz帯、10.240Mhz その高調波など)
抑制に抜群の効果があります。
BPF無し状態で測定すると16Mhz帯、副次的に発する電波の強度は認証試験基準値を
上回る値が出ますが、BPF追加後は、16Mhz帯はもとより、その他の不要電波も
大幅に軽減します。


左回路図「は、RJ580改にも使用したチェビシエフ型9次ローパスフィルターです。
空芯コイル4コとディップマイカコンデンサを使用したLPFです。

コイル、インダクタンスは
L1.4   0.382uH   D=9.25o  L=9.7o  N=8回   D.Lは線形中心から測定
L2.3   0.412uH   D=9.25o  L=12.4o   N=9回 

取り付け箇所は、送信部終端部分。
770基板内で言えばL11とPTTスイッチの間になります。
W5(ジャンパ線W5)を取り去り、その部分に噛ませる形で取り付けます。

リミッティング機能付きマイクアンプを内部へ取り付けた様子。
770フレームへ2箇所穴開けをし、金属スペーサーを挟んで3oビスで固定します。
VCC12vの取り出しはメイン基板パワースイッチ後の12vパターンからです。

27Mhzバンドパスフィルター取り付け。
取り付けは770電池ケース取り付けネジを利用し、共締めして固定しました。
共締めにする関係上、当該部分のネジは長さが長いものに交換。

後付けパーツ「リミッティングアンプ」「BPF」「LPF」全てを取り付けた状態。
LPF取り付けは、770フレームへ2箇所穴開けし、3oビスで固定しました。


各パーツ配線箇所の説明です。 上記写真「赤色線」の部分をパターンカットします。 
◆@、@’の説明
@→@’本来メイン基板
「ピンク色」の部分でローディングコイルとPTTスイッチ部が繋がっている箇所ですが、このピンク色のパターンを赤色部分でカットしています。
カットした理由ですがBPFを追加挿入し除去した筈の副次的に発する電波が、このピンク色パターンの部分で再び拾い込みアンテナ側へ出てくることが判明した為
この
ピンク色パターンを殺した状態にしています。結果、BPFで取り除いた副次的に発する電波の戻り込みは無くなり認証基準値をクリアーする様になりました。
@→@’は
50Ω同軸ケーブルで繋いでいます。同軸ケーブルを使用する事で副次的に発する電波を拾うことなくローディングコイルまで繋ぐことが出来ます。

A、A’の説明
A→A’は本来ジャンパ線w5でPTTスイッチ部と送信終段部を繋いでいます。
w5を取り去り、その部分に製作したローパスフィルターを挿入する形になります。

B、B’の説明
B、B’は本来、受信部L1とPTTスイッチ部が繋がっているパターンです。
赤色線の箇所でパターンカットし、その部分に製作したバンドパスフィルターを挿入します。

Cの説明
Cの箇所は本来ジャンパ線w11が接続されマイクアンプ部へ一旦パターンで繋がり、そこから770サイド基盤のマイク入力部分へ繋がっている箇所です。
w11を取り去り、その部分から「直接」シールド線でサイド基盤マイク入力部へ接続します。

Dの説明
Dは本来ジャンパ線
w12でマイクアンプ入力L5へ繋がっています。w12を取り去り、その部分から製作したリミッティングアンプの入力へシールド線で繋ぎます。

Eの説明
Eの部分は
本来C34とR39が付いている箇所です。必要のないC34、R39は取り去りR39の部分には0.033ufのセラミックコンデンサを半田付け
新たに半田付けした0.033ufの
片足と、リミッティングアンプの出力をシールド線で繋ぎます。

取り付けた後付けパーツは左写真の黄色→の箇所でネジ止め。
「A」のネジはバンドパスフィルターを共締めしているネジで、元々付いているネジでは
長さが不足するので
ネジ部の長いネジへ交換しています。

">

上記取り付けネジの頭が本体ケースへ干渉するので赤色矢印の箇所を削り取っています。
削ると言うより半田コテを利用し溶かしています。

左スペアナモニターの表示はノーマルICB-770、受信待機時
漏れ出てくる電波を測定したものです。
認証試験項目「副次的に発する電波の強度、4nw」(−54dBm)
測定結果、局発周波数16Mhz帯が10dBm以上、基準値オーバーしていることが
モニターより見て取れます。
基準値以下ですが、第2局発10.240Mhzもかなりの値です。
その他、上記周波数の高調波と思われる多くの電波が測定されています。
500Mhz以上で見られる電波は無線機とは無関係の外来ノイズです。
無線機の電源ON/OFF無関係に測定されています。

左のスペアナモニターは、製作した27Mhzバンドパスフィルターを
上記説明した箇所へ追加し、測定したものです。
局発周波数16Mhz帯の頭はまだ見えていますが、認証試験基準値−54dBmを
大きく下回る−67.3dBmまで押さえ込んでいます。
また、周辺に見えていた不要な漏れ電波も−80dBm以下と影を潜めてくれました。

左スペアナモニターは1.25KHzシングルトーン、変調度60%送信時の
(認証試験と同条件)1GHzまでの測定です。
ノーマル770時に突出し基準値オーバー(−13dBm)ていた2次高調波
54Mhzの頭は見えていますが基準値以内に収まっています。
その他の高調波も基準値以内で全く問題有りません。
54Mhzのマーカーは−45.7dBmですが外部アッテネーター10dBを噛ませているので
実際の値は−35.7dBmです。 いずれにせよ基準値は軽くクリアーしています。

その他、占有周波数帯幅の基準値
(搬送波のピーク値と上下第5側帯波のピーク値の差が−25dBm以上)
この測定結果も上下側帯波とも−34.5dBm以上で、基準値余裕のクリアー値です。


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